1つ目は、情報化時代と呼ばれる今、簡単に薬の情報が手に入るようになってきました。薬の使い方によっては好ましくない作用(副作用)が出たり、かえって健康を害するようなことも起こることが、広く知られてきています。より安全な薬を使いたいという思いは、患者さんにも医療関係者にも共通した願いになり、漢方薬がクローズアップされてきました。
2つ目は、漢方エキス製剤の登場です。生薬を煎じて濃縮し、乾燥させた漢方エキス製剤ができて、煎じる手間がはぶけ、簡単にのめるようになりました。同時に携帯にも便利になったため、漢方薬は急速に普及・定着しました。また、生薬は品質がバラついたり、虫やカビがついて変質したりしやすいものですが、漢方エキス製剤ではこうした品質の問題も解決することができ、安心してのめるようになりました。
東洋医学の中に、漢方医術という漢方薬と鍼灸(はり・お灸)を用いて病気の 治療をする、2000年以上前から伝わる医学があります、単に病気だけを治療する 目的にして出来上がったものではないわけで。予防医学も含まれているわけです。 したがって導引・按摩(マッサージ)や食事療法(薬膳)などの養生法も 含まれています。そのなかで漢方薬は経験医学として発達してきたわけです。 経験の、今で言う「臨床」実験の積み重ねです。なお且つ自然界にある草根木皮 が主に用いられ、一部に動物薬や鉱物薬などを用いて、煎じ薬が多いのですが、散剤・丸剤・にして用います。漢方医学は自然哲学的考えにより、 自然との調和、順応と言う形で生命をとらえている。 天は、木もく・火か・土ど・金きん ・水すい・の五行の法則をもって、 この地上に東・南・中央・西・北・の五位を運営し、 また、風ふう・暑しょ・湿しつ・燥そう・寒かん の五気を生じて、生けるものをはぐくみ育てている。 人は、この天の影響のもとにあってその身体を保ち、生命を維持しているのである。すなわち、 体内には肝かん・心しん・脾ひ・肺はい・腎じん の五臓があって、この五臓にはそれぞれにひとつづつの気があり、 この五臓に気は地に生じた飲食物の酸さん・苦く・甘かん・辛しん・鹹かんの 五味を取り入れてそれによって出来るものであり、その結果、それぞれの臓には 怒ど・喜き・思し・憂ゆう・恐きょうとよぶ精神的な働きが生まれてくる、と言う東洋医学独特な考え方があります。 (黄帝内経素問)こうていないけいそもん それに対して西洋医学は病人を治すということより、むしろ病気の本態解明のため各臓器を局所的とも言える観点からとらえている。 陰陽とか五行とか言うと難しくとらえてしまいがちだが、治ると言う事実は確実にあるわけです。
新薬(西洋薬)の多くは、有効成分が単一で、切れ味が鋭く、即効性があるため、感染症の菌を殺す、熱や痛みをとる、血圧を下げる、といった一つの症状や病気に対する直接的な治療に適しています。病気の症状は早く取れるとおもいます。一方、漢方薬は、いくつもの生薬を組み合わせて作られた薬です、急性的や慢性的な病気の原因はどの臓器から波及したのか、また急性的な症状は(寒邪)(風邪)(湿邪)(燥邪)(暑邪)などどの邪に侵され、どの経絡に進んだかを診て、その邪を発汗や瀉して追い出す。慢性的な病気の時はその臓や腑は何処に熱や、寒が及び、他の臓腑との関係を診て根本的な原因は何処の臓腑にあるかを診ます、またその人が生まれ持った体質を把握して全身的な病気の原因治療を行う、つまり病名がなくても症状さえはっきりすれば、漢方薬を処方する事が出来ます。具体的には、血圧が高いと言う症状が出たとします。新薬は先ず血管拡張剤、カルシュウム拮抗剤、高圧利尿剤、などが考えられます、直ぐに血圧が下がります。東洋医学は高血圧の原因は血そのものに原因があると考え、なぜ血に熱を持っているかを診ます、ストレスから肝に熱を持ったのか、年齢から腎に虚熱が発生して血に熱を持ったのか、血が停滞しているのかを色々な問診や望診などで探り当てます、その熱が実熱なのか、虚熱なのかによりまた薬方が違います。
かつて恐れられていた感染症や伝染病は、抗生物質の普及やさまざまな新薬の開発により、比較的容易に治すことができるようになりました。しかし高齢社会に突入したわが国では、高血圧、糖尿病などの生活習慣病(成人病)の増加、加えて、免疫異常による気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患や心身症・ストレス病など、複雑な病気が増えてきました。
このような病気に対して、新薬だけでは十分な対応ができないことも多く、漢方薬の役割が期待されるようになってきました。すなわち、新薬を患者さんの症状の数に応じていくつも処方するのではなく、新薬に漢方薬を加えていろいろな症状にうまく対処したり、漢方薬を中心に治療し、急性期などの要所要所に新薬を使い、お互いの長所を生かすなどの、新しい治療法が取り入れられてきています。